法定免除とは、一定の条件に該当する人について、国民年金保険料の納付が免除される制度です。対象となる期間は保険料を納めた期間と同様に受給資格期間へ反映されるため、将来の年金受給権を維持するうえで重要な制度となっています。
ただし、「保険料を納付したもの」として扱われるのは受給資格期間の部分であり、老齢基礎年金の金額計算では全額納付とは異なる扱いになります。そのため、法定免除期間が長くなると、将来受け取る老齢基礎年金が減額される場合があります。
一般的な「申請免除」について
「申請免除」は4パターンある
経済的な理由などで国民年金保険料の納付が難しいときに、市区町村へ申請して認められる免除です。
主な区分は次のとおりです。
| 区分 | 保険料の扱い | 将来の老齢基礎年金への反映 |
|---|---|---|
| 全額免除 | 0円納付 | 1月あたり0.5月分程度の年金額 |
| 4分の3免除 | 一部だけ納付 | 1月あたり0.625月分程度 |
| 半額免除 | 半分だけ納付 | 1月あたり0.75月分程度 |
| 4分の1免除 | 4分の3納付 | 1月あたり0.875月分程度 |
いずれも、受給資格期間には「全期間カウント」、老齢基礎年金額は「保険料納付+国庫負担の按分」で計算されます。
「申請免除」は“世帯収入”で見られる
一般的な「申請免除(納付猶予を含む)」の場合は、次の人たちの前年所得を合計ではなく「それぞれ」基準と照らして審査します。
- 本人
- 配偶者
- 世帯主
つまり、本人の収入が少なくても、同じ世帯の親や配偶者に収入があると、免除が通らないことがあります。この点は、パンフレットや研修資料でも「本人・世帯主・配偶者それぞれの所得を見ます」と明記されています。
障害年金の「法定免除」について
障害年金における「法定免除」の対象者
障害年金における「法定免除」の対象者になるのは、障害等級1級または2級に認定された場合です。
ここでいう対象者は、国民年金の第1号被保険者です。自営業者やフリーランス、学生、厚生年金に加入していない方などが第1号被保険者に該当するので、障害年金1級または2級の受給権を取得すると国民年金の法定免除の対象になります。
会社員や公務員として厚生年金に加入している人は、国民年金としては第2号被保険者、その扶養配偶者は第3号被保険者に区分されます。この第2号被保険者、その配偶者である第3号被保険者には年金保険料の免除という概念がありません。
ここがポイント
- 障害年金に関する法定免除は「全額免除のみ」
- 一般の申請免除のような「4分の3・半額・4分の1免除」は選べない
つまり、障害年金を受給して法定免除に該当した場合、国民年金保険料は「全額免除」か「自分で納付するか」の二択になります。
「法定免除」期間の取り扱い
法定免除を受けた期間は、次のように扱われます。
- 老齢年金や遺族年金の受給資格期間には「全期間カウント」される
- 老齢基礎年金額の計算では「1月あたり0.5月納付した」と同程度で評価される
ここで言う「0.5月納付扱い」というのは、国庫負担分で老齢基礎年金が半分だけつくイメージです。全額納付なら1月で1.0月分の年金額になるところ、法定免除だと1月で0.5月分の年金額という位置づけになります。
「法定免除」 は“世帯収入は見ない”
障害年金の1級・2級を受給している第1号被保険者が対象の「法定免除」ではルールがまったく違います。
- 障害年金の受給そのものが要件であり、世帯主や配偶者の所得は審査対象になりません。
- いわば「本人の障害状態」を理由に保険料を全額免除する制度です。
- 免除区分は「全額免除のみ」で、4分の3免除などは選べません。
そのため、親と同居して親に十分な収入があるケースでも、障害年金1級・2級を受けていれば、世帯収入にかかわらず法定免除を選択できます。
| 項目 | 一般の免除・納付猶予 | 法定免除(障害年金など) |
|---|---|---|
| 審査対象 | 本人・配偶者・世帯主の前年所得 | 世帯の所得は見ない |
| 免除の種類 | 全額~4分の1免除+納付猶予 | 全額免除のみ |
| 主な理由 | 経済的な理由 | 障害年金受給などの状態 |
一般的な申請免除は「家計全体の所得」で見る制度、法定免除は「本人の障害状態」で見る制度という違いになります。
法定免除が始まる時期
法定免除は申請日からではなく、法律で定められた時点にさかのぼって適用されます。障害年金1級または2級の受給権が発生した月の前月分から法定免除となります。
例えば、年金証書に記載された受給権発生日が令和2年9月17日であれば、令和2年8月分の保険料から免除対象となります。
法定免除の手続き
障害年金が決定したからといって、自動的に法定免除の手続きが完了するわけではありません。市区町村役場や年金事務所で所定の届出を行う必要があります。
一般的には、「国民年金被保険者関係届書(申出書)」と年金証書などを提出して手続きを行います。自治体によっては郵送での受付にも対応しています。
届出を行わないまま放置すると、保険料の請求が継続したり、未納として扱われたりする可能性があるため注意が必要です。
障害等級が変わった場合
障害年金が3級や不該当になった場合でも、法定免除が直ちに解除されるわけではありません。制度上は一定期間継続するため、年金機構からの案内が届いた際には内容を確認し、必要な手続きを行うようにしましょう。
追納と納付申出
追納とは
全額免除や一部免除、納付猶予などで保険料を納めなかった期間について、後から保険料を納めることを「追納」といいます。法定免除期間については、後から保険料を納める「追納」が認められています。
- 原則として、免除・猶予から10年以内は追納可能
- 一定期間を過ぎると、割増が付く場合がある
追納した期間は通常納付と同じ扱いになるため、老齢基礎年金の減額を防ぐことができます。原則として10年以内の期間について追納が可能です。追納した期間は通常納付と同じ扱いになるため、老齢基礎年金の減額を防ぐことができます。
追納するときの注意
日本年金機構のQ&Aでは次のように整理されています。
- 法定免除期間を追納すると、将来の老齢基礎年金額は増える
- しかし、現在受給している障害基礎年金の金額は変わらない(障害年金は障害等級ごとに法律で定額が決まっているため)
一方で、すべての人に追納が必要というわけではありません。今後も長期間にわたり障害年金を受給する見込みが高い場合や、障害の状態が固定している場合には、老齢年金よりも障害年金が生活の中心となることもあります。
そのため、家計状況や将来の見通しを踏まえ、「追納を優先するべきか」「生活資金を確保するべきか」を総合的に検討することが大切です。
追納の手続き方法
追納を希望する場合は、年金事務所へ申請を行います。承認後に納付書が発行され、その納付書を利用して金融機関やコンビニエンスストアなどで納付します。
申請時にはマイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類が必要となります。詳しい手続き方法は年金事務所へ確認するとよいでしょう。
法定免除のメリットとデメリット
メリット
法定免除になると、その間は国民年金保険料を免除する選択肢があります。経済的な負担が軽減されるため、治療や生活の維持に専念しやすくなります。
- 障害年金を受給している間の国民年金保険料の納付義務がなくなる
- 保険料を納めなくても、老齢基礎年金の受給資格期間にはきちんと算入される
- 老齢基礎年金も全くカウントゼロではなく、0.5月納付相当で評価される
- 経済的に厳しい中でも、将来の老齢年金権をある程度確保できる
- 遡及認定による還付を受けられる場合がある
免除期間は年金受給資格期間としてカウントされるため、将来の老齢年金や障害年金の受給要件を満たしやすくなります。また、障害年金の遡及請求が認められた場合、法定免除も過去にさかのぼって適用されることがあります。その結果、本来は免除されるはずだった期間に納めていた国民年金保険料について、還付を受けられるケースがあります。
デメリット・留意点
法定免除を選ぶか、あえて納付や追納をするかは、障害の見込み、今後の働き方、老後の生活イメージなどを踏まえたライフプランの中で考えるのが重要になります。
- 老齢基礎年金額は「全額納付した場合よりも少なくなる」(1月につき0.5月分にとどまるため)
- 追納をすれば老齢基礎年金額は増えるが、現在受給中の障害基礎年金額は増えない
- 追納は原則10年以内、かつ一定期間を過ぎると割増が付くので、負担感がある
法定免除の最大の注意点は、将来受け取る老齢基礎年金が減額されることです。法定免除期間は受給資格期間として扱われる一方、老齢基礎年金の金額計算では全額納付と同じ評価にはなりません。そのため、法定免除の期間が長いほど、将来の老齢年金額に影響が生じます。
特に若い年代で障害年金を受給することになった場合、法定免除期間が長期化する可能性があるため、将来設計を考えるうえで理解しておくことが重要です。
まとめ
法定免除は、障害年金1級または2級を受給する方にとって非常に重要な制度です。保険料負担がなくなる一方で、将来の老齢基礎年金には影響が生じるため、メリットとデメリットの両方を理解しておく必要があります。
また、障害年金の認定を受けた場合でも、自動的に手続きが完了するとは限りません。届出を忘れると本来受けられるはずの免除が反映されないこともあります。
障害年金の受給が決まった際には、法定免除の対象となるかを確認し、必要な手続きを早めに行うことが大切です。そして将来の老齢年金とのバランスを考えながら、追納を行うかどうかも検討していくとよいでしょう。



