― 「途中で通院していない時期があるけど大丈夫?」という不安への対応 ―

以前からうつ病で通院していたのですが、途中で病院に行けなくなってしまった時期があります。“早く治したい”と思って無理をしていた時期もありましたが、体調が悪くて外出できずに受診していない期間ができてしまって…。
その後も症状に波がありましたが、今では通院再開しています。障害年金を申請するときに『ちゃんと通院していないなら難しい』と言われないか不安です…。

“通院していない期間がある=直ちに障害年金が認められない”というわけではありません。
特に精神疾患や発達障害のある方の場合、体調悪化や意欲低下、人との関わりへの負担感など、通院中断には様々な背景があります。
まずは当時の状況を一緒に整理しながら、今の状態に至る経過を確認していきましょう
空白期間については「症状が軽かったのではないか」「適切な治療をしていなかった」と評価されやすい傾向のため、その間の状況をしっかり整理して慎重に扱う必要があります。
目次
空白期間が不利になる理由
障害年金の審査では、通院を中断していた期間について一定の確認が行われることがあります。なぜ問題視されるのかを知っておくことで、どのような整理や説明が必要になるのかも見えてきます。
「通院していない=軽快していた」と見られやすい
Eさんが心配されるように、通院が途切れている期間は慎重に見られやすい論点の一つであることは間違いではありません。この期間は「客観的な裏付け」が不足していることで、軽快していたと扱われる可能性があるからです。
ただし、精神疾患では、実際に症状が重かったからこそ通院できないこともありがちで、例えば、抑うつ状態で起き上がれない、人と接触することへの不安が強い、予約管理ができないなど、症状そのものが受診継続を難しくしている場合もあります。
その事情を伝えることができなければ、「通院していない=問題なく生活できていた」と受け取られてしまうことがあるのです。
診療記録がないことで裏付けが弱くなる
通院していれば、その時期の症状や生活状況が診療録として残ります。
しかし、受診していない期間については医療機関の記録が存在しないため、症状に関する”裏付け”がありません。
障害年金は、診断書や診療録など“残っている資料”をもとに判断されます。そのため、受診記録がない期間については、「その間は症状が軽かったのではないか」「医療の必要がない状態だったのではないか」と推測されやすくなります。
特に、「その期間も障害状態が続いていたのか」という点は慎重に見られやすいため、単に“受診していなかった期間”として終わらせないために、申立書で詳しく説明していくことや、診療記録以外の資料を用意できるか整理してく必要があります。
空白期間をどう位置づけるか
通院を中断していた期間はマイナス評価になりがちですが、その間の生活状況をしっかり整理して説明できるかによって、評価が変わることがあります。
曖昧な説明では不利に働くことがある
障害年金では、「つらかった」という抽象的な表現ではなく、「実際に何ができなかったのか」「なぜ通院できなかったのか」が重要になります。この点が曖昧なままでは、実際にどのような支障があったのか伝わりません。
特に、服薬治療が必要だった場合は、「適切な治療を受けていなかった」「自己判断で治療を中断していた」と受け取られてしまう可能性もあるため注意が必要です。
「何となく病院へ行けなかった」「気づいたら通院が途切れていた」という説明ではなく、空白期間が単なる“未受診期間”ではない“生活上の困難が続いていた期間”として伝えることが大切です。
「その間も障害状態は続いていた」事実があるか
障害年金では、「通院していたか」だけではなく、「実際にどの程度日常生活に支障があったか」が重要です。空白期間を”断絶”した期間ではなく、「症状によって通院も不安定になっていた時期」として、全体の経過の中に位置づけることができるかどうか。
初診から現在までの流れの中で「なぜ通院できなくなったのか」「その間どのような生活状態だったのか」を整理していくなかで、「人との接触を避け続けていた」「一人で病院へ行くことが難しかった」など、実際の生活実態を確認します。
これらを時系列で自然につなげられる事実があれば、“単なる未受診期間”ではなく、“症状は続いていたが、受診につながらなかった”という流れで申立書に具体的に説明していくことになります。
評価が分かれるのは「情報の質」
生活実態を具体的に示すことが重要
Eさんのケースでは、「その頃どんな一日を過ごしていましたか?」「食事や入浴はどうでしたか?」というように、生活レベルで振り返っていただきました。
くわしくお話を伺う過程で、当時の就労先の出勤簿から頻繁に休暇を取得していた事実が判明したことで、「外に出ようとすると強い不安や動悸が出た」「一人では移動できず受診を断念していた」といった当時の状況を確認することができました。
このように、ご本人のお話だけでなく、客観性の高い資料を用意することで、通院していなかった事実をその間も障害状態は続いていたという視点で裏付けることができる場合もあります。
診断書から読み取ることができるケース
例えば、「慢性的な抑うつ状態が持続」「症状の波があり改善乏しい」「外出困難や意欲低下により受診継続も難しかった」など、継続的な症状や生活機能低下が記載されていると、空白期間の生活実態について「その間も障害状態が続いていた」と診断書からも読み取れます。
逆に、「症状安定」「自己判断で受診終了」などの記載がある場合は「受診が必要な状態だったにもかかわらず、特に理由なく通院していなかった」と評価されていることになるため注意が必要です。
「軽快して受診不要だった」のか、「症状悪化によって受診継続すら困難だった」のかを、診断書との整合性を意識しながら整理していくことが大切です。
注意しておきたいポイント
障害年金では、診断書と申立書の内容が一致しているかが非常に重要になります。困難さを強調するために、診断書の内容と大幅に乖離してしまうかえって不利な要因となります。
診断書と申立書の整合性を意識する
例えば、申立書では「外出困難で日常生活も成り立っていなかった」と書かれているのに、診断書には「症状は比較的安定」と書かれていると、審査側は「実際はどうだったのだろう」と迷ってしまいます。
障害年金では、診断書と病歴・就労状況等申立書の内容が一致しているかが非常に重要です。その期間も含めて連続した経過とされないため、”申立書だけを詳しく書けば良いわけではない”のです。
そのため、申立書では診断書との整合性も意識しながら説明していく必要がありますが、主治医との間で空白期間に対する情報共有ができているかを確認しておきたいところです。
長期間の空白がある場合
これまでの説明では、Eさんのように空白が短期間であることを前提としていまが、数年単位に及ぶ場合には「社会的治癒」という考え方を検討することがあります。
これは、医学的に完全に治っていなくても一定期間にわたり日常生活や仕事がほぼ通常どおり送れていた場合に、「医療を行う必要がなくなって、社会復帰している状態」と評価される制度で、一般的には5年以上が一つの目安とされています。
その後に同じ病気や関連する症状が再び悪化して受診した場合、「新たに発症したもの」として新しい初診日が認められることがあります。どの年金制度が適用されるかや、保険料納付要件を満たすかどうかに大きく関わるため、高度な専門的視点が求められる領域といえます。
まとめ
受診の空白期間があると、「不利になるのではないか」と不安に感じるのは自然なことです。しかし、空白期間があること自体で直ちに不利になるわけではありません。
特に障害認定日に遡って請求する際や、定期的な受診を再開してから請求時期までの期間があまりないケースでは、「なぜ通院できなかったのか」「その間どのような状態だったのか」を具体的に整理し、全体の経過の中で一貫性をもって説明することが重要です。
不安な場合でも、一つひとつ丁寧に振り返りながら整理していくことで、評価につながる可能性を高めることができます。



