大人になってから「生きづらさの理由」がわかる人たち

少し前の統計になりますが、2022年の厚生労働省調査によると、発達障害の診断を受けている方は国内で推計87万人とされています。そのうち18歳以上は約51万人ですが、2011年は18万人、2016年は25万人でしたから、この十数年で大きく増加していることが分かります。

背景には、社会的理解の広がりや診断体制の整備があります。国は乳幼児健診などを通じて早期発見・早期支援を進めていることがあります。しかし一方で、大学進学や就職など環境が大きく変わるタイミングで困りごとが顕在化し、「大人になって初めて受診した」というケースも少なくないのです。

ここでは、大人になってから発達障害の診断を受けた方の「生きづらさ」と「障害年金」について、実務の現場から感じていることをお伝えします。

感じ方はひとそれぞれ

長年「自分だけおかしい」「努力不足だ」と責め続けてきたことに、はじめて説明がついたと感じる方が多い印象があります。診断名がつくことで、「性格の問題」ではなく「本来の特性」だと分かり、自己肯定の低下が少しやわらぐ面があるといわれています。また、支援機関や就労支援、手帳や障害年金など、これまで見えていなかった選択肢に気づきやすくなり、「助けを求めていい」という許可を自分に出せるようになることもあるようです。

一方で、「もっと早く知りたかった」「今さら分かっても遅いのでは」と複雑な思いを抱く方もいます。
診断名にショックを受ける人もいれば、ピンと来ず実感が追いつかない人もいて、その揺れはしばらく続くことがあります。自分だけでなく、家族や周囲に理解を得られるのか、受入れられるのかと戸惑い、「どう伝えたらいいか分からない」という悩みもよく聞かれます。

就労面に与える影響

診断をきっかけに自分の得意・苦手が明確になったことで、業務内容や働き方を見直す人が増えます。
一般雇用のまま工夫して続ける人、障害者雇用や就労移行支援を利用する人、在宅や短時間勤務を選ぶ人など進み方はさまざまです。大切なのは「普通に合わせる」ことより、「自分の特性に合う環境や配慮を探す」という視点に切り替えていくことだと言えます。

社会の理解が進み、診断名をオープンにして働く方が増えている一方で、「働き続けることの難しさ」に直面している方も少なくありません。発達特性による情報処理の偏りやコミニュケーション力の不足が背景にあることが多いためですが、身体障害のように分かりやすい制限があるわけではないため、「外からは普通に見える」ことで支援の必要性が理解されにくいことも。周囲からは「やる気がない」「社会人として甘い」と誤解されやすく、「自分が悪い」と思い込み無理を重ねてしまいます。

本来、発達障害のある方の就労は決して不可能ではなく、特性に合った環境であれば能力を十分に発揮できるのですが、短期離職を繰り返す、非正規雇用が続く、職場で孤立する、合理的配慮が受けられない、といった問題に直面する方が多いのも事実です。

障害年金はもらえるのか

ご相談で最も多い質問のひとつです。結論から言えば、十分に可能性はありますが、発達障害に限らず障害年金の認定は、「病名」ではなく日常生活能力や労働能力の制限の程度で判断されということ。つまり、「どれだけ生活に支障があるか」が具体的に示されなければなりません。

その根拠として、医師の診断書が重要な判断資料になります。しかし、診断書をしっかり書いてもらえれば大丈夫というわけではありません。ここも誤解している方が多いのですが、障害年金は診断書だけで決まるわけではなく「病歴・就労状況等申立書」についても重要な書類となります。

精神疾患のケースでは特に申立書の内容が審査に影響することが多く、単に「書く」のではなく、診断書との整合性や表現の具体化、認定基準に沿った記載構成など評価されやすく作成することがポイントです。この点は「伝わらなければ、存在しないのと同じ」という厳しい現実があります。

幼少期に診断有り、成人後診断で扱いが異なる

幼いころから発達障害と診断されている場合は、子どもの頃からの通院歴や療育、学校での配慮などの記録をもとに「小さい頃からずっと困りごとが続いていること」を示しやすいのが特徴です。初診日が二十歳より前になるため「二十歳前障害」として保険料の納付要件を問われない代わりに、所得要件が設定されている独自の建付けとなっています。

対して、大人になってから発達障害と診断された場合は、先に「うつ病」や「不安」などで通院していて、途中から発達障害と分かるケースが多く、この一番はじめの受診日が初診日として扱われます。受診歴が古いときは、昔のカルテが残っているかどうかもポイントになります。

また、保険料をきちんと納めていたかどうかの確認が必要になり、診断書や申立書の中で、子どもの頃から今までの困りごとのつながりと、今の生活や仕事でどんな支障が出ているかを、具体的に伝えていくことが大切です。

まずは一度、ご相談ください

発達障害の診断を受ける方が増えているということは、それだけ社会の中で“困難を抱える方が見えるようになった”ということでもあります。働き続けられるか不安で将来が見えない、どうしてよいか分からない、そのような状況であれば、まずは今抱えている不安を聞かせてください。

経済的な不安が治療や生活の足かせになっているのであれば、生活の土台を安定させ、無理のない働き方を模索するために、障害年金という選択肢があります。働くことは人生の大きな部分を占めます。だからこそ、「我慢」ではなく「仕組み」で支えることが大切です。

障害年金はその「仕組み」であり、収入の不安が軽減されて経済的に安定するだけでなく、心の安定にもつながります。さらには、自分に合った職場をあせらず探すことができる、短時間勤務へ調整するなど働き方を変えられる、働けるようになるまで治療に専念できる、などの可能性が広がります。

「自分は対象になるのだろうか?」その疑問からで構いません。確かな形で踏み出すためには、その伴走者が必要な場合もあると考えています。

 

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