共同通信社の報道で、日本財団が実施した調査で、障害のある方の家族の85.5%が「親なき後」に不安を感じているという記事を目にしたことがありました。
たしかに、障害のある方の生活は日々の介助や見守りだけでなく、経済面においても家族の支えに依存しているケースが少なくありません。しかし、親も年齢を重ね、いつまでも支援を続けられるわけではありません。
今回は、障害者家族が抱える将来不安と障害年金の関係について考えてみたいと思います。言うまでもなく、障害年金は「親なき後」を見据えた生活基盤づくりにも重要な役割を果たしています。
親なき後の不安とは何か
経済的な支えを失う不安
日本財団の調査では、親なき後の不安として最も多かったのが「生活費や医療費など経済的なこと」でした。
障害のある方の中には、一般就労が難しかったり、働けても収入が安定しなかったりする方が少なくありません。そのため、生活費の不足分を親が補っている家庭も多く見られます。
親が元気なうちは問題が見えにくくても、介護や病気、退職によって家計状況が変化すると、将来への不安が一気に現実味を帯びてきます。親が支えている間は生活できていても、その支援がなくなった後に経済的困窮へ陥る危険性があります。
家族だけで支え続ける限界
調査では、親の代わりに支援する人として「兄弟姉妹」を挙げる回答が多く見られました。
しかし兄弟姉妹にも仕事や家庭があり、将来にわたり継続的な支援を担うことは容易ではありません。また、兄弟姉妹が遠方に住んでいる場合や、自身も高齢になる場合もあります。
障害福祉制度は年々整備されていますが、実際には家族が中心となって支援を担っている家庭が少なくないのが現状です。そのため、「親がいなくなった後も生活を維持できる仕組み」を早い段階から整えておくことが重要になります。
障害年金は親なき後の生活基盤になる
毎月の収入を確保できる
障害年金の最大の役割は、継続的な所得保障です。障害年金を受給していることで、生活費や医療費、交通費、福祉サービス利用料などに充てることができます。
特に親が亡くなった後や施設利用を検討する際には、本人名義の安定収入があるかどうかが大きな違いになります。親の貯蓄だけに依存するのではなく、公的制度による継続収入を確保しておくことは将来の安心につながります。
もちろん障害年金だけで全ての生活費を賄えるとは限りませんが、定期的な収入があることは生活設計を考えるうえで大きな意味を持ちます。親に依存する生活から少しずつ本人主体の生活へ移行するためにも、障害年金は重要な支援の一つといえるでしょう。
本人の自立を支える制度
障害年金は「働けない人のためだけの制度」と誤解されることがあります。しかし実際には、就労していても障害による支障が大きい場合には受給できる可能性があります。
障害年金の目的は、働くことを妨げる制度ではなく、障害による生活上の負担を補うことです。受給によって経済的余裕が生まれることで、就労継続支援事業所の利用や就職活動、通院治療の継続などにも取り組みやすくなります。
所得水準が低い傾向にある障害者雇用で就労する選択肢も広がり、無理をして働いて離職を繰り返すよりも、結果的に安定した就労継続につながる可能性も期待できます。
将来のために早めの準備が大切
「そのうち申請しよう」がリスクになる
障害年金の相談では、「親が元気だからまだ大丈夫」と考えていたものの、親の病気や死亡をきっかけに慌てて相談されるケースがあります。
しかし障害年金には初診日の証明や診断書の準備など、多くの手続きが必要です。過去の病院が閉院していたり、カルテが廃棄されていたりすると、申請自体が難しくなる場合もあります。
将来必要になるかもしれない制度だからこそ、必要性を感じた段階から準備しておくことが重要です。実際に受給の可否は別としても、まずは請求できる可能性があるのか確認しておくことが安心につながります。
親が元気なうちに情報を整理する
障害年金申請では、本人だけでなく家族からの情報が重要になることがあります。幼少期からの経過や受診歴、日常生活の状況などは、親が最も詳しく把握していることが少なくありません。
ところが親の高齢化によって記憶が曖昧になったり、必要な資料の所在が分からなくなったりすることがあります。診察券、お薬手帳、診療明細、学校の記録、手帳取得時の資料などは、将来の申請に役立つ可能性があります。
将来の不安が現実化してから動き出すのではなく、親が元気なうちから受給可能性を確認し、必要な資料を整理しておくことで将来的な手続きを円滑に進めやすくなります。
地域支援と障害年金を組み合わせる視点
障害年金だけでは全てを解決できない
親なき後の問題は、単純にお金だけの問題ではありません。住まい、医療、福祉サービス、見守り、相談支援など、多くの支援が必要になります。その背景には、生活費や医療費への不安、家族以外の支援体制の不足、将来の生活設計の難しさがあります。
お金だけの問題ではないと言いつつも、継続的な収入を確保し、本人の生活基盤を支える障害年金は、親の支援が難しくなった後も本人が暮らしていくために大きな支えになる重要な制度であることは間違いない。
もちろん、障害年金だけで全ての不安が解消されるわけではありません。しかし、グループホームの利用や地域生活支援サービスの活用、成年後見制度の利用なども含め、複数の制度を組み合わせて考えるうえで、経済的な基盤があることで利用できる選択肢は大きく広がります。
地域で支える仕組みづくりが必要
日本財団の調査でも指摘されているように、家族だけに支援を依存する仕組みには限界があります。これからは地域全体で支える体制づくりがますます重要になるでしょう。
相談支援専門員、福祉事業所、医療機関、行政、社会保険労務士などが連携し、本人が安心して暮らせる環境を整えることが求められています。障害年金はその中の一つの柱です。経済的な安心があることで、地域で生活するための土台ができ、将来への選択肢も広がります。
障害のある方を支える家族の多くが、「親なき後」に強い不安を抱えています。「親がいなくなったらどうしよう」という不安を少しでも軽減するために、今から利用できる制度を知り備えておくことが大切です。
最後に
障害年金は申請したいと思った時にすぐ受給できる制度ではなく、初診日の証明や診断書など多くの準備が必要です。特に精神障害や発達障害のある方の場合、外見から困難さが伝わりにくく、自覚症状が十分でないケースも見受けられます。
親なき後の備えは、財産を残すことだけではありません。障害年金をはじめとする公的制度を活用し、地域の支援につながることも大切な準備の一つです。将来の安心のために、今できることから少しずつ備えていきましょう。



